―関連講演会(逐次通訳) 「ゴッホ若き日のデッサン《鎌で刈る人》、そして晩年の絵画へ」

講 師 講師:シュラール・ファン・ヒューフテン氏
(美術史家、前ファン・ゴッホ美術館コレクション部長)
日 時2016年10月10日(月・祝) 13:30-15:00 ※終了しました
場 所下田市民文化会館 大ホール(下田市4丁目1番2号)
定 員800名
内 容世界的なゴッホ研究者として知られるシュラール・ファン・ヒューフテン氏をお招きして講演会を開催します。ゴッホは画業のはじまりになぜミレーを模写したのか、晩年に再び模写した意味とは何だったのか、ゴッホ芸術の秘密とその魅力についてお話いただきます。
申 込※聴講無料
※詳細は美術館までお問い合わせください。

チラシ(PDFファイル)

「夏のワークショップ」を開催します

「こども向け 夏のワークショップ 2016」として、「日本画を描いてみよう〜水墨画編〜」(7月23日〈土〉)と、「鉛筆デッサン入門講座(8月12、13日、15日〜17日)」の2つのワークショップを開講します。
いずれも参加費は無料です。画材は当館より貸出します。
夏休みを利用して、ぜひチャレンジしてみてください。
詳細はチラシをご覧ください。

※チラシPDFへ

 

カミーユ・ピサロ 《エラニーの牧場》

カミーユ・ピサロ Camille Pissarro
エラニーの牧場 Prairie d'Eragny
1885年 油彩・カンヴァス 54.5×65.5cm

新緑の草原で牛が草をはみ、画面右には林檎の花が咲き誇っています。それらは絵具を混ぜず点のように並べた筆跡で描かれることによって、鮮やかな色彩効果を見せています。サインの赤や、家並みの赤茶色、リンゴの花のピンクなど赤系の色彩は、草原に広がる緑に対するやわらかな補色の効果を生み出し、画面にいっそうの輝きをもたらしています。

本作は1886年の第8回印象派展に出品された作品です。当時の批評家はこの作品を、「近くで見るとカンヴァスはさまざまな色をした釘の頭の集まりのよう」だが、「適正な距離から見ると遠近法が生まれ、面は深さを持ち、空は適度な軽快さで処理されて、広大な空間とぼんやりした地平線の印象が生み出されている」と評しています。

 

 

アルフレッド・シスレー 《秋風景》

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アルフレッド・シスレー Alfred Sisley 
秋風景 La plaine de Champagne du haut des Roches-Courtaut
1880年 油彩・カンヴァス 50.0×65.0cm

フォンテーヌブロー近くの高台からシャンパーニュ平原を流れるセーヌ川を見下ろした風景が描かれています。画面左下に描かれた近景の草むらは絵具を盛り上げるように塗られ、その質感はシスレーが見た風景を生き生きと伝えるかのようです。秋空はリズミカルで荒いタッチ、大地は素早く水平に流れる線で描かれ、地平線は点のような筆跡であらわされています。川の流れに沿うようなタッチによる水面は、空の色を反映して微妙に色彩を変化させています。一貫して移り変わる風景やそこから受ける感覚を描き続けたシスレーは、印象派の画家たちの中でも、最も印象派らしい画家といわれています。

 

 

オディロン・ルドン 《ひまわりのある花束》

ひまわりのある花束 Le bouquet au tournesol 1910-14年 パステル・紙 61.0×47.0cm

オディロン・ルドン Odilon Redon
ひまわりのある花束 Le bouquet au tournesol
1910-14年 パステル・紙 61.0×47.0cm

青い花瓶に一輪の大きなひまわり、キルタンサスのようなピンクの花、マーガレットのような小さく黄色い花などが生けられています。パステルによる簡潔な表現は、花の生命そのものを描き出すかのようです。

それらを引き立てるのが青と白の花瓶です。花瓶の青は、反対色の黄色のひまわりを際立たせています。同じ花瓶を描いた油彩画と比べると、その効果は明瞭です。余白の中に置かれた花瓶と花々は、柔らかなパステルの色彩が響き合うことで、季節や時間を超越するかのような夢幻のイメージに息づいています。

 

 

オディロン・ルドン 《ダンテとベアトリーチェ》

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オディロン・ルドン Odilon Redon
ダンテとベアトリーチェ Dante et Béatrice
1914年頃 油彩・カンヴァス 50.0×65.2cm

柔らかな色彩に包まれた二人が目を閉じて静かに向き合っています。左の人物はダンテ・アリギエリ、中世イタリアの詩人です。ダンテは「地獄篇」、「煉獄篇」、「天国篇」からなる壮大な叙事詩『神曲』をあらわしたことで知られています。

『神曲』の物語は、ダンテ自身が深い森の中から地獄へと迷い込む場面から始まります。そこで古代ローマの詩人ウェルギリウスと出会い、彼の導きで罪人たちが苦しむ地獄を巡ります。地獄の大穴を抜けると、煉獄の山がそびえ、山を登るごとに罪は浄められていきました。その頂で天国を案内するベアトリーチェと出会います。

ベアトリーチェはダンテが幼い頃から熱愛した実在の女性であり、彼女は24歳で夭折しました。『神曲』において、ダンテは長い地獄と煉獄を経て、ついにベアトリーチェとの再会を果たします。煉獄山の頂の上で、眼を閉じたベアトリーチェと向き合うダンテの心には、まるで静寂が広がるかのようです。

 

 

クロード・モネ 《雪中の家とコルサース山》

クロード・モネ Claude Monet 
雪中の家とコルサース山 Maisons dans la neige et mont Kolsaas
1895年 油彩・カンヴァス 64.2×91.2cm

1895年2月から2ヶ月の間、モネは義理の息子を訪ねてノルウェーに滞在し、光と色彩の効果をコルサース山の連作で探求しました。本作もそうした中の1点です。近景には屋根に雪の積もった家並みを描き、遠くには雪を頂くコルサース山が描かれています。山や雪に落ちる影は単純な黒や灰色ではなくピンクや青色で、赤や茶色をした家の壁に反射する光は青色であらわされています。影は全くの暗闇ではなく弱い光があり、時間や天気によって変化することを意識したモネは、コルサース山などの連作を通じて光の効果を探求し続けました。

 

 

ピエール=オーギュスト・ルノワール 《アルジャントゥイユの橋》

 

オーギュスト・ルノワール Pierre-Auguste Renoir
アルジャントゥイユの橋 Pont du chemin de fer à  Argenteuil
1873年 油彩・カンヴァス 46.0×63.0cm

鉄橋が架かるセーヌ川の様子が自由なタッチで描かれています。川面は短い平筆のタッチでリズミカルに塗られて、その感覚はセーヌ川を吹き抜ける風を想像させるかのようです。鉄橋の影の灰色は光と影のグラデーションではなく、色の面としてあらわされており、川面に盛り上げられた白い絵具とともに降り注ぐ陽光の瞬きが感じられます。

この時期、ルノワールはしばしばアルジャントゥイユに住むモネを訪ねて、ともに制作をしました。二人は戸外にイーゼルを立てて同じ風景を描き、「筆触分割」によって色彩で画面を構成する新しい絵画を模索しました。こうした作品は翌年に開催される「第1回印象派展」に出品され、大きな反響を呼びました。自由な感覚に満ちたこの風景画は、印象派の誕生を象徴する作品の一つといえるでしょう。

 

 

ピエール=オーギュスト・ルノワール 《果物の静物》

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オーギュスト・ルノワール Pierre-Auguste Renoir
果物の静物 Nature morte aux  fruits
1902年頃 油彩・カンヴァス 18.5×32.5cm

ぶどうやりんご、ザクロなどの瑞々しい果物が輝くような色彩で描き出されています。ぶどうには透明な薄い絵具が塗り重ねられ、下の層を生かすことで明暗が表現されています。りんごは透明と不透明の赤を使い分けて、ザクロは印象派風の筆跡を残した白、赤、黄、緑などを大胆に用いることで、異なる質感があらわされています。

こうした透明感のある絵具の使用はルノワールが伝統的な技法に学んだものでした。1870年代、ルノワールは筆跡を並べる印象派の技法を多用しましたが、その後、行き詰まりを感じ、18 世紀以前の古典絵画に学んで塗り重ね(グラッシ)の技法を再び研究して自らの絵画を発展させました。